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第1種のペテン


あなたから盗む最も狡猾な方法は、あなた以外の人におカネを与える事である。
そうすれば、あなたの住居や敷地に一歩も侵入する事なく、その中にある物を盗む事が出来る。
あなたの管理区域の外で通貨が発行され頒布された分だけ、あなたの管理区域内の物品へのあなたの所有権は減るのである。


貨幣の使用に対する従来の理解は、貨幣は交換価値という価値を持っており、その行使(貨幣で物を買う事)においては、物々交換と全く同様に、その場で、売り手と買い手が相互に相応の見返りを与え合う、という理解だ。

しかし本当は、貨幣使用の本質は、一つには、益の授受が同時ではなく、一方に対して他方が時間的に遅れる事、あるいは、一方が他方に対して時間的に先行する事、に有る。

本当はそうなので、貨幣には交換価値がある、とする従来の理屈、は詭弁である。

この詭弁を
第1種のペテンと呼ぶ事にする。

貨幣に価値が有るとすると、造幣して貨幣以外の財を購入すれば、その場で価値が倍増する事に成り不合理である、という風に考えても、交換価値という概念の無理に気付く事が出来る。

貨幣使用のもう一つの本質である、益を貸した相手とは別の相手から益の返却を受ける、という
無限連鎖講の性質も、貨幣には交換価値がある、という理屈で不正に正当化しようとされる事なので、第1種のペテンに含める。

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第1種のペテンは詭弁ではあるが、我々がその弊害を受けているか、という問題の答えは直ぐには分からない。
直接的な弊害は無いだろう。
例えば生卵の生産と消費の事を考えれば、一旦売っておカネで持っておく方が得であり、そういうメリットの方が大きい。
そういう意味で、第1種のペテンは、薬を飲む必要があるが拒否する子供に、無味無臭の薬液を水だと偽って飲ませ、その後子供の口から「そうされてよかった」という感想を聞く、といった類の事だろう。



出典 15日@2012年01月@日記 貨幣の起源
16日@2012年01月@日記 貨幣の動力学
17日@2012年01月@日記 貨幣の動力学(2)
18日@2012年01月@日記 第1種のペテン


最終更新2018年12月21日