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高岡英夫さんの著書で私はAFS対BFS問題を初めて知り、衝撃を受けました。
高岡英夫さんの解説では、AFSとBFSの力学的側面、威力発生のメカニズムに焦点が当てられていました。

それとは別に私は、大学1年生の時に空手部に入部してそこで初めてBFSを見て、それがBFSだという事を理解できないで居たときに、次の様な事を考えました。

先輩がやってるBFSだと、踏み込んだ人の頭が足を止めて待ってる人の拳が届く位置に来ると同時に踏み込んだ人の拳が足を止めて待ってる人の頭に当たるように、踏み込んだ人がBFSを実行してる。
なるほど、これは必然だな。
AFSではどうしても、踏み込んだ人の攻撃の方が足を止めて待っている人の攻撃よりもインパクトが遅くなる。
自分が踏み込んでAFSする場合に、この不利を消すには、空中でフレキシングをするしかない。
空中でフレキシングをやろうとしたが、どうしても出来ない。
つまり私は、高岡英夫さんと違って、力学的側面ではなく運動学的側面を先に考えていました。
その時の私にとってはAFSだけが唯一絶対の手技の方法であって、BFSは全く頭に有りませんでした。
BFSの考えが思い浮かんでも、それをやっちゃあおしめーよー、という風に直ぐに切り捨てた事でしょう。

しかし、あれから何十年も経った今、私の出したこの問題への結論は、高岡英夫さんの理屈よりはむしろ大学1年生の時の私の理屈に近い。

一言で言うと、AFSは想定と準備の技であり万全を目指すものである。
BFSは、実践と適応の技であり、妥協の産物である、威力面もAFSより優れている事は図らずもである。

AFS対AFSでは後手必勝である。
Aさん:踏み込んでAFS
Bさん::足を止めてAFSでカウンター
Aさんの頭が、Bさんの拳が届く位置まで来た時にAさんはAFSを起動するから、BさんはAさんの頭を野球のバッターの様に打てば、AさんがAFSを起動した瞬間にBさんの拳がAさんの頭に当たるようにする事が出来る。
Aさんの拳がBさんの頭に届くのは、それより後です。
 
ストレートパンチの場合には以下の様に成ります。
 
だから、AFSだと言われるボクシングでも、よく見りゃ、ジャブは伝統空手とほとんど同じBFSやってるよ。
BFS正拳突き(青)対AFSストレートパンチ(赤)なら、以下の様に成ります。
 
だから、BFSを使えばタイミングを互角にする事が出来るだけであって、BFSの方が強いってわけではない。
AFSがBFSの頭を野球のボールだと見なして野球のバッティングの要領で打てば、BFSを迎撃できる可能性は十分に有る。
それを連続して多数回成功させている動画をYouTubeで見た事が有る。
それは私がこの原理を自分のどこかのウェブページに書いたよりは後だった。

AFS対AFSが後手必勝であるという事は、AFSでは先制攻撃が出来ない、という事です。
他にも、後退する敵を追いながら攻撃するにはAFSではアキレスとカメに成ってしまう、といったような問題が幾つか指摘できると思いますが、私は、AFSでは先制攻撃が出来ない事が、BFSを生み出す動機に成ったと推測します。
そして、それは、AFSで実際に戦ってみるまでは気付かれなかった、のではないでしょうか。
AFSで実際に戦ってみると先制攻撃が出来なくて困った、BFSにすると出来るんだけど、BFSではフレキシングが出来ない、フレキシングは捨て難い、でも背に腹は替えられない、フレキシングと先制攻撃のどちらかをあきらめる必要が有るならフレキシングをあきらめるしかない(妥協)。
ええい、こうなったらもうやけくそだ、こうしてしまえ ・・・・・ ポンッ!という風に出したのがBFSだったという説です。
けど、そんな事をして威力が不足しないだろうか。
やってみると、図らずもBFSでも威力は十分だった。
むしろBFSの方がAFSよりも手応えが有った。
意外だなあ。
こういう成り行きだったのではないだろうか。

ボクシングの試合を見ても、ジャブではBFSをやってるじゃんという事だけじゃなくて、ボクサーが試合中にAFSの機動性の無さに悩まされている様子も多々見られる。
これは、最適の到達距離よりずっと離れた位置に居る敵を無理な姿勢でAFS攻撃する姿が多く見られる、多く見られるどころか、パンチというものはそうしないと届かないものなんだ、という教訓すら発しているかのようである。
これは、想定と準備の段階での考え方(AFS)が頑固に頭を支配しているからで、試合をしてみて分かった事を忌憚無くフィードバックすればBFSもどんどん使おうという気に成るだろうと思う。

AFSで先制攻撃するには、以下の可能性が残されている。
(1) 後屈立ちのまま足をジリジリと少しずつ前に進めた後、前屈立ちに移行しながら打つ。
(2) ガードを固めたまま進入する。
(3) 野球のバッターがボール球だと誤認して見送る事に相当する現象を狙う。
(4) 変化球で空振りさせる。
私の四つ足の構えは(3)(4)を利用しようと目論んでの物です。
デンプシーロールは(4)ですね。

(2)の亜種として、後ろ回し蹴りの要領で蹴らずに敵に向かって踏み込めば、接近過程で敵はこちらの弱点を見付けるのが難しく、密着距離まで接近できるだろう。
後ろ回し蹴りのように上体を敵から離れる向きに倒す。
踏み込んだ足で敵の前足を踏みつけるのも良さそうだ。



最終更新2023年11月01日