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僕は空手の受け技には以前から疑問を持っている。
外受けとか内受けとか上段上げ受けとか下段払いのことだ。
まず第一の疑問は、空手の指導書に掲載されている写真を見ると、受け技が極まった瞬間、攻撃者の手足が受けた人に届いてない事だ。
受けるときに半歩後ろへ後退するから、こうなる。
これなら受け技は敵の攻撃技を自分に当たらないものにする目的を持つものではない事になる。
第二の疑問は空手の受け技は攻撃技を出すのと同じ要領で全身を使って強力に受けるものだが、これだと受けた後の反撃が遅れてしまい、敵の攻撃を受ける事が出来ても、反撃に転じようとした時には敵の第2撃が飛んで来てそれを受けねばならなくなり、以後その繰り返しとなる。
これは僕が実戦で経験した。
敵の攻撃を受ける事が出来るという事は、敵の攻撃を実際に受ける前から、自分の方が情報の面で有利な状況にある。
それを活かせない戦法は誤った戦法である。
ではどうすれば良いか?
ひとつはボクシングの交わすテクニックを用いる事だ。
ヘッド・スリップやスウェイやダッキングだ。
これらを用いれば攻撃用の姿勢を保ったまま敵の攻撃を交わす事が出来るので、敵の第2撃よりも早く反撃を返す事が出来る。
この点ボクシングのディフェンス・テクニックの方が空手の受け技よりも優れている。
しかし、ボクシングのこれらのテクニックには盲点がある。
それは、正面を突く振りをして実際には敵の頭部の現在位置のすぐ左やすぐ右を突く事によって、ヘッドスリップ先の敵頭部にパンチをヒットさせる、という戦法に対して無防備な事だ。
空手諸流派の中には受け技を捨て去った流派もある。
が、僕は受け技を捨てたくない。
空手の受け技は敵の手足を払いのける技であり、ボクシングにもパーリングというディフェンス・テクニックがあり、これは空手の受け技に相当する。
結局、空手の受け技の用法として僕が考え出したものは、受け技と同時に攻撃技を出す、というものだ。
空手2段の友人に聞いてみると、この技法は僕が考え出す前から存在し、交差法と呼ばれるポピュラーな技なのだそうだ。
交差法以外にも空手の受け技の用法がありそうなのでその線も研究してみたい。
一つには芦原空手のサバキが思い浮かぶ。
芦原空手のサバキは、運足も併用するが、空手の受け技の一つの用法を示していると捕らえる事が出来る。
芦原空手のサバキによって攻撃者は大きくバランスを崩す。
つまり受け技は相手の体勢を崩すために用いられている。
受け技によって敵の攻撃用の手足を痛めつける、という考えにも出合った事があるが、この理論を応用する際には、自分の接触部位が常に敵の接触部位よりも丈夫な部位になるように配慮しなくてはならない。
てな具合だが、僕の空手体系においては受け技は原則として交差法でのみ用いる、ということにした。
僕の目には、芦原空手は空手ではなく空手キラーに見える。
僕は空手が好きだ。
勝つならあくまで空手で勝ちたい。
ただし、芦原空手の攻撃技はフルコン空手の模範である、と付け足しておかねば、芦原空手に申し訳ない。

ここまでは、この宇田英才教室サイトのアドレスがまだhttp://www.f3.dion.ne.jp/~x-wooder/だった頃に、このサイト内に私が書いた文章です。
その後、私は、「使える受け技」というタイトルの動画を撮影・公開しました。
受け技@空手の技@動画
この動画においても、私は空手の伝統的な受け技の使い方が自信を持って分かってはいません。
2015年に入って私は、
AFS基本構えの詳細をキチンとデザインし始めました。
その過程で、前足側の腕のポジションをどうするか、という問題が発生し、この問題に対して私は、ボクシングの様に引っ込めて構えるのではなく、空手風に前に伸ばして構える、という形式を選択しました。
それと同時に、このポジションからなら、空手の伝統的な受け技がほぼ無修正で基本技のまま使えそうだ、という事に気付き、これが受け技の謎に対する答えだろう、と思う様に成りました。
1990年代に既に私は、ストレートパンチを打った後で、打った腕を引く代わりに、その腕で受け技を実行する、という使い方なら空手の受け技も実用可能だ、という事には気付いていました。
連続性パズル解のページに書かれている動きです。
しかし、これは基本的な使い方ではなく流用だろう、という風に長らく思って来ました。
それが、そうではない、という事が、基本構えの腕のポジションを考えているうちに、分かったわけです。
つまり、空手の受け技は実用においては、引っ込めた状態から攻撃技と同じ要領で腕を伸ばしながら繰り出して敵の手足に激しくぶつける物ではなく、腕を前に伸ばした状態から始めて、そこに敵の攻撃腕が接触すると同時に起動し、ぶつける事なく敵の手足に力を加えて軌道を逸らす物であり、腕を曲げながら行なう、という理解です。

格闘技の試合の打ち合い局面(両者が同時にパンチを出している状況)が、実用における受け技の原理を知る為に、非常に参考に成る。
こういう状況では、例えば、左フックと右フックが交錯して、一方の腕が他方のパンチの軌道を逸らしている、というパターンが頻繁に見られるからだ。

パーリングは、腕相撲的なトルクの有利・不利の観点から言って、敵から接点までの距離が自分から接点までの距離より大きく成る様にするのが合理的だと思われる。
この他に、次の様な観点もある。
「敵の攻撃がフェイントだったらパーリングは危険なので頭部に密着させた腕でブロックする方がよい」
これは纐纈という空手の先生の動画で佐藤というキックボクサーが言うのを聞きました。
ハイキックについて顔の近くで受けないともらってしまう、と極真空手の松井章圭館長が言うのをYouTube動画で見た事も有ります。


最終更新2022年04月18日