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2015年11月26日(木曜日)
展開権(宇田経済学の話の続き)


基礎的な分限について、重要な新概念を作ったので、今日は、それについて書く。
それは、展開権という概念だ。
展開権とは、先天的に内在しているプログラムに従って、自己を時間発展させて行く権利の事だ。
先天的に内在しているプログラムは、遺伝子の内容だと思われるが、それ以外にも有るかも知れないので、遺伝情報とは言わずに、先天的に内在しているプログラムという言葉で含みを持たせた。

展開という言葉を使ったのは、先天的に内在しているプログラムという物を、何重にも折り畳まれた平面画に例え、個体の成長を、その展開に例えたかったからです。
この展開という描像は、成長のごく初期の段階である卵子からの細胞分裂という過程、に良く馴染む。
私のアイデアは、母体の外へ産み出された後の成長をも、卵子からの細胞分裂という過程の延長だ、として理解する考え方です。

展開権とは、この展開を妨げられない権利の事です。
相対正義論の方で発展させた概念を使って述べると、他者の展開を妨げる事を目的に故意に自分の予定を変更する事、をしない義務が法核に属していなくてはいけない、という主張が展開権の存在です。

この展開権は、基礎的分限の一部に過ぎないのではなく、基礎的な分限の全てを言い尽くす物としての、基礎的分限のアドヴァンストな再定式化であるかもしれません。

開封理論の所で提起した開封概念は、封という物を展開への障害物と理解する事によって、展開の補助だと見なせます。

人の人生は単なる展開に尽きるものではない、という事ぐらいは、私にだって、言われなくても、分かっています。
しかし、この事は、非干渉展開の個人差が現実の結果に現れていなくても不審ではない、とする意見の根拠としては、極めて不十分だ、と私は考えます。

生命現象においては発展の時間依存性が指数関数的である事を考えに入れると、非干渉展開の個人差という物は、雲泥の差といった言葉が適当であるぐらいの、非常に大きな差である事が、予想されます。
現実の結果に、この非常に大きな個人差が現れていない事は、展開権の(私は、故意で組織的な、と思っている)侵害の蔓延の状況証拠だ、と私は考えます。

指数関数的増大の甚だしさを表す物として、次の寓話が知られています。

大きな手柄を立てた家臣に君主が「望みの物を与える」と言ったので、家臣が「今日は1粒、明日は2粒、という風に毎日前日の2倍の米を下さい」という風に要望すると、それを聞いた君主は「たったそれだけでいいのか」と言いながら要求を呑んだ。
しかし、しばらくすると、与える約束をした米の量が多く成り過ぎて、約束どおりに米を与える事が出来なくなった。

この寓話では、べき乗されるのは2です。
べき乗されるのが2より小さくても、2ほどではないけれど、それでも、指数関数的増大という物は、やはり、ツキとスッポンほどの差を生みます。

1.001365×10 ≒ 38
1.0001365×10 ≒ 1.4

つまり、1日当たりの進歩が普通の人よりもたった0.1パーセント大きいだけで、10年後には普通の人の38倍先まで進んでおり、もう天才です。
1日当たりの進歩が普通の人よりもたった0.01パーセント大きいだけでも、10年後には、1.4倍に成り、これはハッキリとした違いです。

さて観念論として、どの個体も先天的には大体同じ様な物であり、それ故に結果の不平等は全て不公平に起因する、という考え方が有ると思いますが、果たして、どの個体も1日当たりの進歩が0.01パーセントすら違わない、なんて事が有るでしょうか?
私は、有るわけがない、と思う。

展開権という物は、その差に起因する結果の不平等を、元からその人が
ソレダケノモンだったのだから正当な物だ、という風に考える権利概念です。

展開権の侵害は、邪魔されなければオレはこれだけの者に成れたのに、これだけの事が出来たのに、という恨みが、それへの反応である事を考えれば、その不当性が極めて深刻で自明である事が理解される類の物である。
現行法の言葉で言うと、利益逸失という損害を与えた、という加害に該当するでしょう。

展開が妨げられる事の悲しさを私は、2010年カナダ=フランス=アメリカ合作のSPLICEという映画を見ていた時に、非常に強く感じました。
作者の意図としては、そういう事を表現するのが目的ではなかったかもしれないが、私にとっては、この作品は、展開権の重さを感じさせる点で、重要な作品です。
ドレンが、何年間も無人の屋内で無為に過ごす事や、羽根を広げて屋上から飛び立とうとする瞬間にクライブに呼び止められ飛び立つのをやめるシーンで、展開権の侵害や展開権の放棄という物を深刻な物として感じました。


宇田経済学@持論@学問