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2018年11月21日(水曜日)
原器を用いずに単位を定義する事について

2018年11月16日にフランスで開かれた国際度量衡総会で、キログラムの定義としてキログラム原器を使う方式を廃止しプランク定数を基に計算する方式に変更する事、が決定されたそうだ。

原器ではなく物理法則を用いて単位を定義する、というアイデアは、1999年に発行された私の著書「古典物理学」に「最自然単位系」として書かれている。

以下は、最自然単位系を提案しています、という指摘です。
 
 宇田雄一著「古典物理学」9ページから抜粋。

以下は、最自然単位系の具体例です。
 
 宇田雄一著「古典物理学」76ページから抜粋。

以下は、単位硬直性の概念について述べている部分です。
 
 宇田雄一著「古典物理学」362ページから抜粋。

以下は、私の著書「古典物理学」の第1刷が1999年夏に発行された事を示す部分です。
 
 宇田雄一著「古典物理学」奥付。

私の考え方は、物理学の基礎法則を表す数式の組は、その中に含まれる係数まで指定すれば、単位系を一意的に定義する、という考え方です。
これを私は「単位硬直性」という言葉で言い表しています。

念のために言い換えると、単位系を少しでも変更すると、それに応じて物理学のいずれかの基礎法則を表す数式に含まれる定数係数の値を変更しなければいけなく成る、というのが物理学の基礎法則の完全な組が持つ単位硬直性です。

これは、すなわち、物理学の基礎法則の完全な組で単位系を定義できる、という事に他なりません。

つまり、私のアイデアは、単に数式がゴチャゴチャしないスッキリした形に成る様に単位を選べるよ、という物ではなく、そういう単位系は1つしか無いので法則を表す数式の組で単位系を定義できるよ、という物です。

この本を書く前の学生時代から私は素粒子論の自然単位系(プランク定数÷2πと光速の両方が1に成る単位系)という物を本で読んで知っており、私による最自然単位系という命名は、それに基づく物ですが、素粒子論における自然単位系は計算の煩雑さを減ずる目的の筆記法に過ぎず、単位硬直性の概念を我々に教える物ではありませんでした。

さらに私の単位硬直性という概念は量子論か古典論かという選択に依存しない普遍的な概念であり、私は古典物理学の基礎法則の組を使って最自然単位系を定義して見せている点にも注目して下さい。
したがって私はプランク定数に依拠していません。
ただし電気素量に基づいています。

不審な事に私が自著「古典物理学」を発行した直後に「EMANの物理学」というウェブサイトが広江克彦さんによって開設されています。

 

 
ウェブサイト「EMANの物理学」は西暦2000年に開設された事が分かります。

このウェブサイトに「物理係数が全て1になるような単位系」を探そうという試みが記事として書かれているのを見た記憶があります。
以下は、その証拠です。
 

広江克彦さんは単に素粒子論で普通に用いられている自然単位系を説明しているだけなのかもしれません。

キログラムの定義が原器を用いる方式から物理法則を用いる方式へと変更されたのは、私の著書「古典物理学」が出た約20年後ですが、メートルの定義が原器を用いる方式から法則や現象を用いる方式に変更されたのは1960年の事だそうです。

1960年にメートルの定義はクリプトン86元素が一定条件下で発する橙色の光の真空中の波長に基づく方式に変更された、とwikipediaに書かれていました。

単位の定義に原器を用いない、という発想は私以前から有った様です。
しかし、物理学の基礎法則の完全な組が持つ単位硬直性の概念には目覚めていない感じです。