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2015年03月15日(日曜日)
金銭の貸借(宇田経済学の話の続き)

昨日の記事で、金銭の貸借が支配・被支配の関係の問題を解く鍵を握っているかもしれない事が示唆されたので、今日は、金銭の貸借の原理を明らかにしよう、と思う。
特に興味が有るのは、利子の根拠だ。

宇田経済学で分析するからには、通貨を形而上学的要素として排除し、通貨のやりとりの問題も全て、益のやりとりの問題に還元して考える必要がある。
2012年01月13日の記事で提示した視点で考えるわけです。

2012年02月01日の記事に書かれている様に、通貨の使用を益の貸借だと考える理解の仕方(2012年01月11日の記事)では、経済がする行為には、「借りる」「返す」だけが有り、「貸す」「受け戻す」は無いのだった。

通貨の使用を許さない制度から通貨の使用を許す制度への移行は、益の貸借契約という新種の契約を許さない制度から許す制度への移行という規制緩和だ、という事を既に私は
2012年01月11日の記事に書きました。
この規制緩和で、経済は個人から益を借りる事が許される様に成りましたが、個人が経済から益を借りる事は、まだ許されるに至っていません。

これに対して、金銭の貸借を許さない制度から許す制度への移行は、個人が経済から益を借りる事を許さない制度から許す制度への移行という追加の規制緩和だ、と見なせます。

借りたカネでの益の購入は、経済から益を借りる事に当たる。
なぜなら、借金せずに所持金を使い果たした時点で、経済はその人に益の返済を完了しており、その人が経済からそれ以上受益する事は、経済から益を借りる事に当たるからだ。
これに対して、稼いだ金での益の購入は、全て経済から受け戻す事に当たるのだった。
稼いだ時に経済に益を貸し、稼いだカネで益を買う時に経済から、貸した益の返済を受けている、と考える。
両者の間に有利子と無利子の境界がある、というのは、どういう事だろうか?

所持金が、経済に貸した益の影、であった様に、借金は、経済から借りた益の影、だと言える。
所持額が負値を取り得る
赤銭については、これは変則ではなく基本だった。
赤銭の所持額が負である事は、必需益の供給義務を負っている事を意味するのだった。
負値の赤銭に利子が付くのか否かは、後日考える事とし、今日は論じない事にする。

カネの貸手に与益して得た報酬を借金の返済に充てる状況を思い浮かべれば、借金の返済と借益の返済が表裏一体である事が良く分かる。

カネを借りた人は借りたカネを直ぐに使うが、カネを貸した人がカネを貸した事で何かの購入を断念する事は普通は無い。
カネを貸す時には、今はたちまち無くても困らないカネを貸すからだ。
これに対して、借りる側は、今直ぐに必要だから借りる。
これが有利子と無利子の境界を生んでいるのではないか。
この着想は、利子が時間性の物であるという実情、とも良く符合する。

金銭の貸借が生じると、生じない場合に比べて、経済は益の返済を前倒し実行させられる。
これは経済にとって元々の契約を超えたサービスなので、金銭の貸借が無ければギリギリ破綻しない様なアテ価値様態の経済は、そういう事があっても破綻しない為には、動力を増強する必要があり、貸した益に利子を付けて返してもらう、という形で、その増強は行われる、と考えられそうだ。

つまり、カネの貸し手が貸金せずに自分でカネを持っていれば、そのカネで直ぐには益の購入をしないのだから、経済は与益を直ぐにはしなくて済む。
これに対して、金銭の貸借が行われれば、カネを借りた人は借りたカネで直ぐに益の購入をするから、経済は与益を直ぐにしなければいけなく成る。
これは、カネを貸した人への益の返済(本当はカネを借りた人への益の貸し出しだが)を経済が前倒し実行させられるのと、瞬間的には同じだ。

益の返済時期の差の分だけ、金銭の貸借が無い場合に比べて、金銭の貸借が有る場合の方が、経済に大きな負荷が掛かる。
この負荷に抗して経済が機能を維持するためには動力の増強が必要であり、カネを借りた人が返済用のカネを稼ぐ時に経済にする与益が借りたカネで購入した益よりも利子分だけ多い事が、その増強だと見なせよう。

今日の所は、とりあえず、そういう事を考えました。

2012年01月11日の記事で述べた、通貨の使用を益の貸借だと考える理解の仕方については、その後で、益の貸借の利子はゼロで本当に良いのか?という疑問を持った事を、何度か書きましたが、これは、いずれ、シッカリと考えなければいけない問題であるらしい事が、本日の考察でハッキリと分かる様に成りました。

物財の経年劣化に伴う価値の自然減少の様な要素が有る分だけ、益の貸借にプラスの利子を付けるのは間違っているけれど、放っておけば1時間以内に死ぬ人に食事を与えたら、その人はその後何十年間も社会で大活躍した、という繋がり方だって有り得る分だけ、益の貸借にプラスの利子を付ける余地が有る、と思う。