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2008年3月25日、近畿大学本部キャンパスにて。
私の発表は、物理教育についての25pRC-12「慣性力の概念を生徒に伝えるための具体的な運動と座標系」および素粒子論領域での25pZC-1「量子論の新文法版エーレンフェスト条件」の二つだった。
前者は16:00から16:15までの予定、後者は16:25から16:40までの予定だったので、予定上でも移動時間が10分しか無かったのに、その上、物理教育会場の進行が若干遅れていたので、ZC会場には発表開始予定時刻丁度か数分遅れたぐらいの時刻に到着した。
幸い、今回の発表内容は、分量を少なめに用意していた(25pZC-1なんかOHPはたったの2枚)ので、時間不足には陥らなかった。
最近の私は、学会発表にはメモを持って行ってそれに従う様に成っていたが、今回はOHP以外は用意せずアドリブでしゃべった。
その方がしゃべりは滑らかに成るが、言い間違えて同じ事を言い直したり、要領良く言う事が出来ず表現が冗長に成ってしまったり、肝心な事を言い忘れたりするので、内容的には書いたものを読み上げる方が良い。
音楽の演奏会ではないのだから、音声が流暢であるか否かよりは、意味内容が肝心だと思う。
ここ数年学会で発表を繰り返して来て、そういう事が分かったので、たとえば国会議員が役人の作った文章を読み上げる事に対して、昔ほどには批判的でなくなった。
昔は、それを愚の骨頂のように言う意見を聴いたとき、異論の余地無くそうだろう、と感じたものだ。
私の場合、一度会場でメモを読んでいるときに、書いてある言い方よりも上手に言えそうに感じて、言ってみたら上手くまとまらず、結局メモを読み直した、という経験が転機に成った。
発表している時の私はメモを作っている時の私には勝てない、という事をその時思い知った。
考えてみれば当たり前で、一瞬のうちに読み上げる部分を、メモ作成時には時間を掛けて良く良く検討するわけだから。
アドリブでやってみて上手く行かなかったその時には、しまった、やっぱりそうなのかあ、と思った。
読むべき文章を準備している時には思い浮かばなかった絶妙の表現が、会場で話の流れと現場の臨場感に押されて自然に口を突いて出るという事も、無いではないが。
また、メモを読んでいる間は顔が下を向いてしまい、聞いて下さっている方々の方を見ていない状態に成る、という点も良くはない。
全く過誤無くしゃべりたい、なんて、そんなにケチケチする必要は無かろう、と思われるかもしれないが、物理学会の発表は与えられる時間が短い。
1件につき、発表10分、質疑応答5分、と成っている。
そのため、要領良く言うか冗長に成るか、言い間違えるか否かが、与えられた時間内に言い切れるか否かに関わって来る。
2006年秋のハワイ大会で、発表言語が英語だったため、読み上げ文を事前に完全に作り込んで、現地ではアナウンサーのごとく読み上げに徹した事も、その後の私の事前メモ準備傾向に拍車を掛けた。
このハワイ大会では、私に与えられた発表時間は質疑応答無しで20分だったが、その分言いたい事も多かったので、予行演習時には時間を使い切る状態だった。
25pZC-1では、前回までの復習に相当する、新文法自体の説明に十分な時間を取った。
これは普及している説ではないので念のために毎回説明しておいた方が良い、と私は思っている。だが、そうだとすると、将来研究がもっと先まで進んだ場合に、前置きに時間を取られて本題を説明する時間が無くなりはしないか、心配だ。
25pRC-12の内容を後で聞き直してみると、やはり手際良く言えてない部分が何箇所もある。
それに、後で思った事だが、[2]ではコリオリの力と遠心力が働く事が分かる、という意味に成ってしまっていたとしたら、それはいけない事なので、コリオリの力と遠心力の合力のみ描いた方が良かった。
今回発表した理屈は、[2]の向心加速度を生じさせる力をコリオリの力と遠心力の2つに分けて考える事の由来とは見なせないからだ。
この問題は、アドリブでしゃべった事によって生じたのではなく、自宅でOHPを準備する段階で生じている。
ただし、OHPに間違った事が書かれたり描かれたりしているわけではない。
コリオリの力と遠心力の両方が描き込まれているOHPを提示したときには、ギャグを極めるために、『誰かさんが「矢印を両方書くのは違うと思います」と言われそうな図なんですけど、今日は来ておられないかな』と言った。
誤解しているために遠心力と向心力を同時に描き込んでいる図に対して、決まって「両方同時に描き込まない方が良い」とコメントする優秀な先生が、いらっしゃるのだ。
[2]の状況について座長さんから確認されたので、補足が必要だと思い、静止しているものを運動している座標系から見ている、という状況である事を、述べた。
私が図に描き込んでいるコリオリの力はコリオリの力ではない、と指摘する人も出た。
その人は、どうも、非慣性系から見て直線運動に近い運動をしている物体に働くのがコリオリの力で、円運動では駄目だ、と考えている様だった。
だから、その人を諭すために私は、地球上の物体の運動(風など)が地球外から見て円運動に見える場合は駄目ですか、と言った。
これは私のミスで、地球外から見て円運動ではなく、地面に対して円運動でなくてはいけなかった。
例えば、北極点を中心に、地球の自転の角速度と同じ大きさの角速度で、地球の自転と反対の向きの、円環気流が生じている場合(地球外から見て空気が止まっている場合)等を、考えるのが良かろう。
でも、これは、コリオリの力という語の定義の問題だから、理由を付けて説明するという類のものでもない面がある。
式で書くと、コリオリの力の定義に必然性がある事が、良く分かるのだけれど。

講演概要

25pRC-12
日本物理学会講演概要集
第63巻
第1号
第2分冊
408ページ。
OHP

OHP-13-1


OHP-13-2


OHP-13-3


OHP-13-4


OHP-13-5


OHP-13-6


25pZC-1で何を話したか、細かな事は良く覚えていないが、何箇所か言い間違えをした様に記憶している。
それと、新文法は、量子状態を定義する一瞬の時間的長さが、ゼロではなく1/α程度である、という主張を内包している、とコメントしておいた。

講演概要

25pZC-1
日本物理学会講演概要集
第63巻
第1号
第1分冊
14ページ。

English
OHP

OHP-sr-1


OHP-sr-2


最終編集2016年01月04日